問い 長年住んでいた借家から転居することになりましたが、家主さんから原状回復をするよう求められました。何をすれば良いのでしょうか。 答え 転居によって建物の賃貸借契約が終了すると、借主には原状回復をす …続きを読む
1 パワハラの末、理由もないのに懲戒解雇
会社で事務職員として働いていたAさんは、会社の経営者から、毎日のように職場でAさんを侮辱するような言葉を浴びせられ、時には経営者の自宅にまで呼び出されて暴言を浴びせられるなどのパワハラを受けていました。
その上、Aさんの業務範囲外であるにもかかわらず、Aさんが経営者の私物である自動車を管理していなかったという理由で、一方的に懲戒解雇を言い渡されてしまったのです。
懲戒解雇は、職場の規律に違反した労働者を解雇するという、最も厳しい懲戒処分であり、労働者にとっては、解雇予告手当や退職金が支給されないなどの重大な影響を及ぼすものです。
そのため、使用者が労働者を懲戒解雇する場合は、①就業規則で定める懲戒事由に該当していなければならず、②懲戒解雇に相当する事由でなければならず、さらに、③労働者に理由を説明した上で弁明を聞くなどの慎重な手続が必要とされています。
本件の懲戒解雇は、懲戒事由に該当しておらず、Aさんに対して弁明の機会も与えられていなかったため、違法な懲戒解雇であることは明白でした。
2 労働審判を申立
Aさんは、懲戒解雇に納得できないと言って、相談に来られました。
経営者という立場を利用していじめられた上、違法な懲戒解雇をされたのですから、Aさんは会社に解雇の撤回を求めることができます。
そこで、まず、会社との間で、違法な懲戒解雇を撤回してもらい、Aさんがパワハラのない正常な職場環境で働けるよう、交渉を行いました。
しかし、会社との交渉が進まなかったため、裁判所に対し、懲戒解雇の撤回とパワハラに対する慰謝料の支払を求める労働審判を申し立てることにしました。
3 労働審判で和解が成立
労働審判は、原則3回の期日で、当事者からの事情の聴き取りや調停を進めるなどして、個々の紛争にふさわしい解決を図る手続です。
本件の場合、Aさんはパワハラの横行する職場に戻ることを望みませんでした。 そこで、労働審判においては、金銭的解決を図るよう、裁判所に働きかけていきました。
また、Aさんが裁判官に対し、パワハラの実態を詳細に説明し、懲戒解雇を言い渡されたときの様子もつぶさに説明することができました。
その甲斐もあって、裁判官が本件懲戒解雇の違法性と、パワハラが横行しているという事情に理解を示し、積極的に金銭的解決を進めてくれたため、当初の想定より高い金額での金銭的解決を図ることができました。
Aさんは、横暴な経営者から長期間パワハラを受けた上、懲戒解雇により突然職を奪われたため、最初はとても落ち込んだ状態でした。
しかし、勇気を出して相談に来られ、労働審判で話し合いが先に進むにつれて元気を取り戻していきました。
職場で横暴な扱いを受けたり、いきなり理由のない解雇をされるなど、働く中で思いもしないトラブルに遭っても泣き寝入りをすることなく相談することで、道は拓けてきます。
また、解雇が無効であっても職場に戻りたくない事情がある場合は、交渉・労働審判などの手続で金銭解決を目指すなど、個々の相談者に応じた解決方法を探ることもできます。
働く中でトラブルを抱えてしまった労働者の方には、ぜひ諦めることなく、事務所まで相談に来ていただきたいと思っています。