問い 長年住んでいた借家から転居することになりましたが、家主さんから原状回復をするよう求められました。何をすれば良いのでしょうか。 答え 転居によって建物の賃貸借契約が終了すると、借主には原状回復をす …続きを読む
ケース① 給与者個人再生の場合
Mさんは、病気で仕事を休んでいる時期に、住宅ローンやカードローンなどの債務を返済できなくなりました。自宅は家族4人にペットもおり、住宅ローンを支払いながら残したいという希望でした。
Mさんは仕事に復帰しており、返済額を減らせば支払を続けることが可能な状況だったので、個人民事再生手続を申し立てることにしました。
個人民事再生手続は、債務の総額を減額するとともに、支払を3年~5年で行えるようにするために申し立てる手続です。住宅ローンは、総額は減額されませんが、住宅ローン債権者の同意があれば支払方法を変更することができます(住宅ローン特別条項)。
裁判所に申立を行い、再生計画を提出し、債権者の過半数の賛成があり、かつ、裁判所が認可すれば、再生計画により債務を減額して支払うことが可能になります(小規模個人再生手続)。会社員や公務員のような安定した給与収入がある場合には、返済金額について条件を満たせば、債権者の賛成を要しない手続(給与者再生手続)となります。給与者再生手続の場合も、裁判所の認可は必要です。
Mさんは公務員で定収入があったので、給与者再生手続を選択しました。源泉徴収票や給与明細を提出してもらい、無理なく返済できるか家計の検討をした上で、再生計画を作成しました。
住宅ローンは従来の返済額で支払っていくことが可能だったので、住宅ローン債権者の同意を得て、住宅ローン特別条項を付した再生計画としました。
個人再生手続では、返済を円滑に行えるよう、申立時から返済用資金を積み立てることも、裁判所の再生計画認可の事実上の要件となっています。弁護士が受任する時点で、返済が一旦停止になったので、家族も協力してMさんに積立をしてもらいました。
最終的に、再生計画が認可され、自宅を残した上で、債務の返済を行っていくことが可能になりました。
ケース② 小規模個人再生で住宅ローン巻き戻し条項の場合
Kさんは、個人で事業を営んでいます。元の勤務先から仕事を出してもらい、事業自体の収入は安定していて、大きな借金もありません。ところが、家族に任せていた住宅ローンの支払いが滞り、住宅ローンが代位弁済されてしまったという通知が来ました。
自宅を手放したくないとの希望から、住宅ローン特別条項付きの個人民事再生(小規模個人再生)を申し立てることにしました。
最大の問題となったのは、既に住宅ローンが代位弁済されていることでした。この場合、住宅ローン債権者・代位弁済した保証会社と協議し、滞納した金額を支払って、住宅ローンを元の状態に戻す(巻き戻し)住宅ローン特別条項に同意してもらう必要があります。
Kさんは、住宅ローン債権者・保証会社が求める滞納額の支払いが可能でしたので、債権者と協議を行って、巻き戻しのための住宅ローン特別条項を作成しました。
Kさんは個人事業主なので、債権者の過半数の賛成が必要な小規模個人再生手続を取りました。債権者の反対はなく、裁判所から再生計画が認可されました。
MさんにもKさんにも、「一旦諦めかけた自宅を残すことが出来た」と喜んでいただきました。
個人民事再生は、債務額や返済額を縮小する一方、数年間に渡り支払を継続していく手続です。このため、裁判所も支払が可能かどうかを厳格に審査します。支払に無理がある場合に個人民事再生手続を選択するかどうかは、慎重に決定する必要があります。
上記のケース①・②のように、収入が安定していて一定の返済が可能であり、かつ、自宅を残すことを希望する事例ではメリットのある手続です。
債務の整理のため、どのような手続を選択するかというところから、早期に弁護士にご相談いただくことをお勧めします。