コラム

外国人労働者の労災事故を通して考える

2024.05.10

日本で働く外国人は約180万人おり、そのうちベトナム人労働者が最も多く、約46万人が働いています。

ベトナム人労働者は、ベトナムの労働者派遣業者やブローカーを通して日本の求人情報を入手し、高額の手数料を支払って来日することが多く、多額の借金を抱えて来日しているケースが数多く存在します。

ベトナム人労働者Aさんは、2017年4月、エンジニアとしての技能を有する労働者として来日しましたが、日本で紹介された会社は機械の部品製造会社で、Aさんは金属加工の業務をしていました。2018年10月、Aさんは、業務中の事故で頭部を強く打って重傷を負 い、その後植物状態となりました。私は、成年後見人に選任され、Aさんの財産管理や会社に対する賠償請求などを行いました。

Aさんのケースに関わって強く感じたのは、国策として外国人労働者を受け入れているにもかかわらず、外国人労働者への求人紹介や、労災が起きたときの補償などは完全に当事者任せであり、弱い立場にある外国人労働者は、極めて不安定な立場に立たされてしまうということです。Aさんは、労災からの補償は受けられましたが、会社が損害保険に入っていなかったため、会社との交渉は難航し、訴訟を起こした上で和解しました。

Aさんは、約5年間に及ぶ闘病の末、故郷から遠く離れた日本で亡くなりました。

外国人労働者は、単なる「労働力」ではなく、ひとりの人間です。家族を故郷に残して来日し就労する外国人を、一人の人間として社会に受け入れることが重要だと思います。