コラム

ある遺言のケースで

2022.09.10

 Aさんから、「末期のガンで自分は長くない。自分の持っている不動産を、 医療機関(法人)に差し上げたい」との相談を受けました。ご夫婦で働いて得た不動産を所有されていましたが、「夫や子供もなく、お世話になった医療機関に」とのことでした。 

 法的な方法としては、寄付や贈与、遺贈などの方法が検討できますが、病気が重く、とにかく急がねばならない事態でした。数日後、入院先から一時帰宅され、「おそらくこれが最後の帰宅で、午後には病院に帰ります」との電話がお昼前に入りました。偶々直ぐに、公証人に自宅まで出張していただくことができて、その日の入院直前に、遺贈 (自分が亡くなったときに不動産を贈ること)の公正証書遺言を作成することができました。 

 そして、Aさんは、その日に入院、直後にお亡くなりになりました。その後は、遺言執行者が公正証書遺言通りに、遺贈の手続きを行うことができました。

 自分の作り上げた財産の行く末を、自分で決めることは、ご本人にとってとても大切なことであり、そのうちとにと考えながら、時期を逸すれば、その希望を叶えることができないままになってしまいます。ご本人の希望を確実に達成するお手伝いの仕事も、弁護士にとっては、大事な仕事です。