コラム

批判を許さない 一風潮に抗して

2021.03.01

 

ある私立大学での出来事です。幹部職員が女子学生に対するセクハラ行為(学生を飲酒やホテルに誘う、チア部員の写真を撮るなど)を繰り返していましたが、学校法人は懲戒処分を見送り、依願退職させて幕引きしました。これに納得できない被害者女性が学校法人に対して損害賠償請求を提起し、自浄作用の欠如に義憤を感じた教授らがこれを応援しました。すると学校法人は、その教授らが学園の名誉信用を毀損した、などと言いがかりをつけて2名を懲戒解雇したのです。この段階で受任した私たちは、2名の地位確認等を求める訴訟を提起し、4年にわたる審理の末、昨年3月、大阪地裁で完全勝利の判決を得ました(現在、控訴審が係属中)

学問の府においてこのようなことがまかり通るのは恐ろしい限りですが、学校法人は、トップダウン(要するに専制政治)が法人経営のあるべき姿であり、「反逆者は処罰されて当然」と考えているようです。学術会議会員任命拒否問題をはじめ、これと同根の風潮が広がりつつあるように思えます。他方で、昨年6月には公益通報者保護法が改正され、通報者の保護範囲が拡大されました(2022年6月までに施行)。

自由な批判は民主主義社会を支える根幹であり、これを許さない大学や社会であってはならない。そのような気持ちで弁護活動に取り組んでいます。