コラム

ジャニーズ事務所と独占禁止法

2020.01.23

2019年7月、ジャニーズ事務所がアイドルグループ「SMAP」の元メンバーをテレビ番組に出演しないよう圧力をかけた疑いがあるとして、公正取引委員会(公取委)がジャニーズ事務所に対し、注意をしていたとの報道がありました。独占禁止法は、事業活動に必要な契約の成立を阻止するなど、競争関係にある他の事業者の活動を不当に妨害する行為を「不公正な取引方法」(独占禁止法19条)として禁止しています。今回注意にとどまったのは、公取委が違反行為の存在を根拠づける証拠までは得られなかったものの、違反につながるおそれのある行為があったと判断したからだと思われます。

注意にとどまったとはいえ、この公取委の動きは画期的です。この背景には、2019年2月、公取委が「人材と競争政策に関する検討会」でとりまとめた報告書にあるように、終身雇用や年功序列といった雇用システムが崩壊し、個人の働き方が変化・多様化したことにより、労働契約に基づき企業の従業員として働くのではなく、個人請負など、いわゆるフリーランスとして企業の指揮命令を受けずに個人として働く者が増加しつつある中で、人材の獲得をめぐる競争に独占禁止法を適用する意義は大きいとし、独占禁止法を積極的に適用する考え方が影響しているのだと思います。

フリーランスとして働く方の職種は、もちろん芸能人やスポーツ選手に限るものではなく、例えばシステムエンジニア、プログラマー、ライター、カメラマン、デザイナーなど多岐にわたります。

継続的な取引が急に打ち切られた原因が、この不当な取引妨害による場合も考えられますので、心当たりのある方はぜひ一度弁護士にご相談ください。