コラム

法律相談Q&A:通勤中の交通事故  労災は使えないの?

2019.01.29

Q 私の孫が、通勤中に、走ってきたバイクに衝突され大けがをしてしまいました。勤務先に労災保険を給付したいと伝えましたが「労災はおりない。」と言われてしまったそうです。通勤中の交通事故には労災保険は使えないのですか?

A 労災保険は、業務上発生した事故または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して、保険給付を行う制度です。

お孫さんは、通勤途中で起きた交通事故で大けがをしたのですから、労災保険給付を受けることができます。

ところで、交通事故に遭ったときには、加害者が加入している「自賠責保険」から、治療費や慰謝料等として相当額の保険給付を受けることができます。

お孫さんの勤務先は、交通事故に遭ったときは、加害者が加入している自賠責保険に請求すべきだ、と考えているのかもしれません。

交通事故が「労災」にもあたる場合、交通事故の被害者は、労災保険と自賠責保険のどちらについても、保険給付を請求する権利を持っています。

ただし、自賠責保険は、治療費、通院交通費、文書料、休業損害、入通院慰謝料などの合計補償限度額が120万円(後遺症は別)と定められており、この金額を超える部分は補償されません。

これに対して、労災保険では、治療費が全額補償されますので、ご相談のケースのように、大けがで治療費が高額になる場合などは、労災保険に請求する方が、治療費負担の面で労働者にメリットがあります。

勤務先が労働者に誤ったことを伝えて、労災保険への給付請求を妨害する行為は、違法な「労災隠し」であり、勤務先には厳重な刑罰が課される可能性もあります(労働安全衛生法第120条、122条 50万円以下の罰金)。

勤務先がどうしても労災申請に協力してくれない場合は、労基署に対して、会社に労災の証明をしてもらえない事情等を記載した文書を添えて、労働者自ら労災の申請ができます。

労災の申請は、弁護士がサポートできますので、ぜひご相談ください。