コラム

シャープ堺工場誘致補助金の違法性を問う住民訴訟

2018.09.07

2009年、堺市にシャープの工場が建設されました。

この工場誘致のために、大阪府と堺市がシャープに莫大な補助金を支出していることはご存じですか?

なんと10年間で総額446億円もの補助金を支出しているのです。

「補助金の額が大きすぎるのではないか」と疑問をもった住民が、補助金は違法であるという住民訴訟を提起し、補助金の見直しを求める住民運動を続けてきました。

訴訟で主に争点となったのは、巨額の補助金に見合う経済効果があったかという点でしたが、それよりも住民が注目していたのは、市がシャープを誘致するために、工場周辺のインフラ整備を公費で行ったり、開発許可手続を免除するなど、過剰な「サービス」をしていたのではないか、という点でした。

堺市や府に対して、シャープ工場誘致に至る経過等の情報開示を求めましたが、行政の壁は厚く、多くの事柄が明らかにされないまま闇の中となりました。

現在、森友学園問題の公文書改ざんや加計問題での行政による不公正な便宜が問題となっていますが、本件においても、行政の秘密主義・非民主的姿勢が明らかになったのでした。

住民訴訟は約9年間継続しましたが、裁判所は「一定の経済効果はあった」として住民原告の訴えを全て棄却し、住民側敗訴が確定しました。

しかし、住民の「補助金のあり方を見直して欲しい」という運動が功を奏し、今後の企業誘致補助金を縮小する条例の改正や、シャープ工場前までの鉄道敷設計画の廃止など、政策の見直しが実現しました。

行政の秘密主義・非民主的体質に触れ、悔しい思いをした裁判でしたが、住民が行政のあり方に積極的に関わっていくことの意義を深く感じた住民訴訟になりました。