2024年4月1日から、相続登記申請が義務化となりました。その内容は、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を法務局へ申請しなければならないというものです …続きを読む
■家主からの相談
賃貸アパートを所有するXさんは、賃借人の一人であるYさんに退去して欲しいと言って、相談に来られました。
Yさんは家賃をきちんと支払っておらず、騒音を出したり、置いては行けない場所に物を置くなど、周囲に迷惑をかけているということでした。
XさんはYさんに何度も注意し、家賃をきちんと支払うよう求めていましたが、埒があかないため、退去させたいという相談でした。
■賃貸借契約の解除
賃貸アパートの賃借人が家賃をきちんと支払わないなど、賃貸借契約違反をしたとしても、家主が直ちに賃借人を退去させられるわけではありません。
まずは、賃貸借契約を解除する必要があります。
例えば、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合、内容証明郵便などを用いて「一定の期間内に滞納家賃を支払ってください。期間内に家賃を支払わなければ賃貸借契約を解除します」という内容の文書を送ります。その後、期間内に家賃の支払いがなければ、賃貸借契約を解除することができます。
アパートなどの賃貸借契約を解除するためには、このような手順を踏む必要があるのです。
■部屋からの明け渡し
賃貸借契約を解除したにもかかわらず、賃借人が部屋から出て行かない場合は、どのようにすればよいのでしょうか。
賃借人には部屋を使用する権利がないからといって、無理やり部屋から追い出すことはできません。近年、家賃を1ヶ月分滞納しただけで、無断で家財を部屋から出したり、鍵を取りかえるなどして強引に入居者を追い出してしまう「追い出し屋」が問題になっていますが、法的な手続を踏まずに、自力で強引な解決を図ろうとすると、逆に家主が賃借人に損害賠償責任を負わされたり、更には住居侵入罪や窃盗罪が成立するおそれがあります。
出て行かない賃借人に部屋を明け渡してもらう方法としては、大きく分けて2つの方法があります。
一つは、明け渡しを求める裁判を起こし、裁判所から明け渡しを命じる判決を得る方法です。
裁判で明け渡しを命じる判決が出されれば、最終的には強制執行により強制的に明け渡しをさせることが可能となります。ただし、裁判が終結するまでに、相当程度、時間や費用がかかることが見込まれるので、弁護士と相談しながら進めていく必要があります。
また、裁判で明け渡しが認められるためには、明け渡しを求める「正当事由」が必要であるとされており、明け渡しを求める家主の側が「正当事由」の立証をすることになっています。この「正当事由」の立証ができるか否かについても、弁護士とよく相談をする必要があります。
もう一つは、賃借人と話し合いをして明け渡しのための条件を決め、任意に明け渡してもらう方法です。この場合、立退料の支払いや明け渡しの時期などについて賃借人と交渉することになります。
当事者同士での話し合いが難しい場合には、調停などで話し合いをすることも考えられます。
このように、家賃を滞納しているとはいえ、家主が単独で賃借人に明け渡しを求めることは、なかなか難しいと言えます。
本件のようなケースについては、弁護士による適切な助言や支援のもとで、きちんとした法的手続を踏んで解決することが重要です。