法定相続分の例外Ⅱ・寄与分について|相続・遺言の法律相談

弁護士 杉本吉史

Q 親の家に同居して両親の生活費や医療費を負担してきた子(A)の相続分は、他の子(B)の相続分と同じで我慢しなければいけないのでしょうか。

寄与分

相続人の中で、被相続人の事業に貢献したり、被相続人の療養や介護をしたりして、遺産を増やしたり遺産を減らさないことに貢献した者に、その貢献を評価して、遺産から先に、寄与分として一定の割合・金額を与える制度があります(民法904条の2)。

ただ、寄与分は、相続財産の維持、増加に特別な寄与行為をしたことが必要ですので、子として当然といえる範囲の面倒を見てきた場合には認められません。

相談の場合も、子として親の通常の生活費や医療費の負担をした程度であれば、寄与分が認められることにはなりません。

しかし、無職の親(死亡)と長年同居し、その生活費や医療費等の全てを負担した相続人について、扶養による寄与分を、被相続人が残した土地、建物、預金などの遺産のうち30%と認めた事例もあります。

なお、今回の相続法改正では、相続人以外の親族が「療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別 の寄与」をし、その結果として遺産が維持または増加した場合に、その親族が相続人に対して「特別寄与料」の支払を請求することができるようになりました。ただし、相続人の場合とは違って、被相続人の事業に貢献をしたとしても、特別寄与料は認められません。

特別受益の制度や寄与分の制度を通じて、相続人間の公平が図られるのですが、何が公平であるかは、簡単には決まりません。私たち弁護士の役割は、調停や裁判などを通じて、依頼者にとって公平で納得のいく解決となるよう裁判官などを説得し、公平が実現できるよう活動することです。