2024年4月1日から、相続登記申請が義務化となりました。その内容は、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を法務局へ申請しなければならないというものです …続きを読む
弁護士 杉本吉史
Q 死亡した知人には3人の子A、B、Cがいます。残った遺産は6,000万円です。しかし、知人の生前にAさんは事業のために1,000万円資金提供を受け、Bさんは結婚の時に自宅として2,000万円の土地をもらっています。この場合、Cさんは3等分の2,000万円しか相続できないのでしょうか?
特別受益とは
相続人の間で、死亡した人(=被相続人)の生前に、事業用資金の援助や結婚の時に不動産の贈与を受けるなどした場合に、相続人間の公平を図るため、生前に被相続人から贈与を受けた者を特別受益者としてあつかうことが定められています(民法903条1項)。
遺産の分配にあたっては、この特別受益を相続財産に加える計算(持ち戻し)をし、その金額を考慮して分配すべき額を決めることとしています。
従って、Cさんは3,000万円を受け取ることが可能です
持戻し免除の意思表示
被相続人が特別受益を持ち戻して計算をしないように意思を表示していた場合には、この意思を尊重することが認められています(民法903条3項)。
この意思表示は、文書や口頭ではっきり言っていなくても、事情を総合的に判断して認められることがあります。
相談の事例でも、例えば死亡した知人がAさんの事業から報酬や生活費をそれなりの金額もらって生活していた場合や、老後にBさんと同居して生活の援助を受け、その結果資産の維持が図られた場合などでは、持戻し免除の意思表示があったものと認められる場合があり、その時にはCさんは残った遺産の相続で我慢しなければいけません。
なお、今回の相続法改正では、配偶者保護のための方策の一つとして、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住不動産が遺贈や贈与された場合には、持戻し免除の意思表示があったものと推定し、免除しない意思表示があった場合のみ、持戻しを行うこととされました。