問い 長年住んでいた借家から転居することになりましたが、家主さんから原状回復をするよう求められました。何をすれば良いのでしょうか。 答え 転居によって建物の賃貸借契約が終了すると、借主には原状回復をす …続きを読む
現在、日本の学費は大変高額で、学費だけで国公立大学でも年間82万円、私立大学では平均131万円に上ります。
離婚後に学費の負担はどうなるのか悩みながら、離婚の相談や依頼をする方が少なくありません。
実際に調停が始まり、家庭裁判所の待合室で、私が依頼者と「まずは学費ですね」と打合せしていると、同じ待合室で、別の弁護士も依頼者と「学費はどうなるでしょうか」と相談をしています。高校生・大学生の子がいる離婚事件では、共通の課題なのです。
婚姻費用(離婚までの生活費)・養育費算定において、いわゆる「算定表」上考慮されているのは、子が成人するまでの公立学校の学費です。私立学校の学費や、成人後の大学生の学費については、実務上、義務者(父である夫)が承諾した費用や、義務者の収入・学歴・地位などから負担が不合理でない費用は、加算を認める方向で検討されます。大学の学費や子の成人後の生活費についても、未成年の子ほど基準は明確でないものの、調停等で請求することが可能です。
私が担当したある事例では、妻がパートで働く一方、夫は定収入のある会社員で、夫による負担が合理的なケースであったことがあり、大学卒業までの学費を夫が負担することで合意しました。
依頼者の方は「最初、学費を夫に負担してもらうのは無理だと思っていました。弁護士に相談・依頼してよかったです」と話していました。
日本国憲法は「ひとしく教育を受ける権利」(26条)を保障しています。ところが学費が高いにも関わらず、公的な給付制奨学金制度がほとんど皆無です。親が学費を負担できない場合は、子が貸与制奨学金で数百万円の債務を負ってしまったり、無理なアルバイトをしなければならなくなったりします。このような国はOECD諸国では他にありません。
個別の離婚事件では、父母がどのように学費を負担するかを話し合っていくことになりますが、子の「教育を受ける権利」の問題として、離婚調停・裁判上での解決を図ることが枢要と考えます。