問い 長年住んでいた借家から転居することになりましたが、家主さんから原状回復をするよう求められました。何をすれば良いのでしょうか。 答え 転居によって建物の賃貸借契約が終了すると、借主には原状回復をす …続きを読む
支払わねばならない保険金を大量に不払いにしていたことにより、明治安田生命が業務停止処分を受けたことはみなさんもご存知でしょう。一つの保険会社の特別な問題ではなく、他の保険会社等についても保険金不払いが問題となっています。
私たちの事務所でも、生命保険はもちろん、車両保険・火災保険などの不払いの相談・依頼が増えています。一つの事例を紹介してみましょう。
Yさんと夫のZさんは、Zさんにかけた生命保険の保険料を毎回店舗まで支払いに行くのが大変なので、支払方法を口座振替に変更することにしました。いくつか保険があったので、「全部口座振替にしてください」と保険会社に依頼しました。
ところが、保険会社のミスで口座振替が出来ていない保険があり、支払の請求が来たので、YさんとZさんは、再度「全部口座振替にしてください」と頼みました。
ところが、2回も頼んだのに、それでも口座振替になっていない保険が残っていたのです。この保険については、その後、契約者のZさん宛に「保険料を支払うように」との請求や督促の通知が一切来ないまま、突然「保険失効」の通知が送られてきたのです。
保険が失効になったことにより、数ヶ月後にZさんが死亡した際、Yさんは死亡保険金を受け取ることができませんでした。
YさんとZさんが何度も手続を依頼したのに、口座振替への変更ができていませんでした。
この保険会社の事務手続きについてのマニュアルを見てみると、保険料については請求の通知を送り、支払がない場合には、各支社で支払の督促をすることになっています。マニュアルどおりに通知がなされていれば、保険料が不払いになっていることが分かったのに、Zさん宛には、このような所定の通知が途中から来なくなっていました。
また、保険会社では、生命保険の「失効」を防ぐため、約款(契約内容を定めたもの)で、保険料の支払いがない場合に自動的に「振替貸付」(それまでに支払われた保険料の中から貸付をして保険料に充てるもの)が行われることになっています。ところが、この件では、それまでに支払われた保険料が十分にあったのに、「振替貸付」が行われなかったという重大な問題があったのです。
保険会社には、個々の保険の契約者に対し、契約が失効することのないよう配慮する注意義務があると考えられます。マニュアルに定められた保険料請求・督促の手続や、保険料の支払いがない場合の「振替貸付」は、この注意義務を具体化したものです。
ところが、この事例では、保険会社の度重なるミスで、保険金を受け取ることができなくなってしまったもので、保険会社は上記の注意義務に違反しています。
このような、保険会社の手続上のミスによって、保険金が支払われない事例は他にもたくさんあります。
保険金が不払いになった時、保険会社側に落ち度や注意義務違反のある事案もありますので、納得がいかない場合は、一度弁護士に相談してみてください。