優性保護法によって障がいを理由に「不妊手術」を強制された事件で、昨年7月最高裁判所は国の法的責任を認める画期的な判決をだしました。この裁判では「除斥」(じょせき)が大きな争点でした。除斥は時効に似た制 …続きを読む
Xさんは戦後間もない子どもの頃から、大阪市内の借家で暮らしてきました。
家主は「店子が住みよいようにしてください」と常に言っていたので、Xさんが借家の補修費用を負担し、手入れをしてきました。家主もこのことを知りつつ、数年に一度、家賃を値上げしてきました。
ところが、家主が急に、「建物が老朽化して、耐震基準も満たさなくなっているから」と明渡しを求めて来ました。しかし、1995年の阪神大震災、2018年の大阪北部地震(大阪市内で最大震度6弱を観測)でも、建物に被害はありませんでした。
一方、Xさんは既に80歳を超え、足も不自由です。室内で移動しやすいように、手すりをつけたりトイレを改修したりもしてきました。通院先の病院や、介護サービスも近くにあります。安心して老後を過ごすには、住み慣れた環境で生活を続けることが不可欠です。
家主は裁判を起こしましたが、私はXさんの事情を訴え、最終的に、Xさんが借家に住み続ける内容で解決が出来ました。
建物が老朽化しているというだけで、家主の明渡請求に正当事由が認められるわけではありません。簡単に家主の請求を認めれば、古い借家の多くで店子が追い出されてしまい、社会的にも相当性を欠くことになります。賃借人側の事情も考慮されるので、明渡しを求められたからといって、簡単に諦めないことが大切です。