コラム

心を亡くす長時間労働

2024.05.25

今年4月、「働き方改革法」(2018年成立)が自動車運転業務などに適用され、遅ればせながら運転手の長時間労働規制が強化されます。ただでさえ賃金労働条件が劣悪で人が集まらないのを長時間労働でカバーしてきたのが、これからはそれも難しくなることから、大阪でもバス会社が定期路線を次々と廃止するなどの事態になっています。物流やタクシーでも事情は同じです。

他方、少子高齢化は、社会全体の人手不足をもたらします。それが解雇事件の減少とか、現代の奴隷制度といわれる外国人技能実習生制度の根本的な見直しにつながるなら結構なのですが、私はサービス残業などの隠された長時間労働が増えることを恐れています。

長時間労働は、健康を害するだけでなく、人間からお金には換えがたい大切なものを奪っていきます。「忙」は「忄(りっしんべん=こころ)を亡くす」と書きます。忙しすぎると、心がすり減っていき、周囲の人への配慮ができなくなるだけでなく、目の前のこと以外への興味が薄れ、社会への関心(批判精神)も乏しくなっていきます。そんな状態でAI「おすすめ」のネットニュースをながめているだけでは、政権与党のデタラメやりたい放題を許すことにしかなりません。長時間労働は民主主義の敵なのです。

残業代請求も、こうした長時間労働を抑制し、人間らしい生活を取りもどすためのものでなければならないと思います。