このたび、旬報社から、「最新テーマ別〈実践〉労働法実務シリーズ」(全13巻)が刊行されることになりました。 私はその編集委員ですが、第1巻の執筆も担当することになり、2024年7月、標題の書籍を上梓し …続きを読む
大阪のある介護施設に勤務していたAさんは、休日に参加した私的な集まりに同席した知人がコロナ陽性だったという連絡をうけました。休み明けの出勤前に勤務先にそのこと を連絡したところ、上司から自宅待機とコロナ検査を所定の病院でうけるように指示されました。幸いAさんの検査結果は陰性で、Aさんが参加した会合では参加者全員がマスク 着用で飲食もしておらず、Aさんはいわゆる「濃厚接触者」にも該当しませんでした。ところが、その後別の上司から「こんな時期に会合に出席して。どうせ飲食もしていたんでしょう」と事実に反する決めつけをされ、Aさんには自宅待機2日間の給与が支給されませんでした。それに納得がいかないとAさんが抗議すると、さらに後日、退職を迫られたのです。
Aさんの自宅待機は上司からの業務指示ですから休業手当が支給されるべきです。事実に反することを前提に職員を非難し、そのあげく退職を迫ることは違法な「退職勧奨」です。休業手当についてAさんは自力で労働基準監督署に相談のうえ支給を実現しました。そして退職勧奨については弁護士に相談があり、相談の結果、労働審判という比較的迅速な手続きを、費用面も考慮して申立書の作成と証拠の整理などを弁護士が支援して本人申立で行う、ということにしました。その結果、1回目の裁判(審判期日)で、Aさんの思いをしっかり発言する機会を裁判所に作ってもらったうえで、Aさんも納得のいく調停成立(解決)となりました。金額的には少額の成果でしたが、他の職員にも影響があると考えてあきらめなかったAさんをサポー卜することができて、 ほんとうに良かったと思います。