問い 長年住んでいた借家から転居することになりましたが、家主さんから原状回復をするよう求められました。何をすれば良いのでしょうか。 答え 転居によって建物の賃貸借契約が終了すると、借主には原状回復をす …続きを読む
問い 借家から退去する際、家主が、保証金からクリーニング代を差引くと言ってきました。
答え 借家契約における敷金・保証金は、家賃を滞納した、あるいは原状回復費用の担保として差し入れるものです。原状回復として家主が差し引けるのは、借主の使い方が悪くて傷つけたなどの「特別損耗」に限られます。普通に使っているうちに古びたもの(経年劣化)や、畳や壁紙の日焼けなどの「通常損耗」は、毎月の家賃でカバーされているはずなので、原則としてこれを差引くことはできず、例外はその範囲が契約書に具体的に明記されている場合に限られます(最高裁平成17年12月16日判決)。クリーニング代は、家主が次の借家人を探す際の先行投資ですから「通常損耗」ではありません。これは国土交通省のガイドラインでも明示されています。
また、いわゆる敷引特約(退去時に保証金の○割を差引くなどの定め)について、最高裁平成23年3月24日判決は、金額があらかじめ明示され、かつ、それが高額過ぎない場合(家賃月額の3.5倍程度のケース)には消費者契約法には違反しないが、そうでない場合は無効としました。
クリーニング代についても、この考え方をふまえて、①金額があらかじめ明示され、かつ、②それが高額に過ぎない場合には差し引けますが(東京地裁令和3年11月1日判決など)、①②のいずれかを欠く場合には差引くことはできず、家主が負担すべきということになります(サービス付き高齢者住宅などの場合も同様です)。