コラム

マンションで名誉毀損?

2022.10.10

 あるマンションの掲示板に掲示した書類が名誉毀損だとして訴えられた事件を担当したことがある。以前の理事会の時代において、無用な集会室の改装に高額な支出がなされた等の疑問がマンションの総会で出された。それに関する当時の資料を現在の理事会にて整理して掲示したところ、その内容が事実に反して名誉毀損だと同じマンションの住民から訴えられたものだった。事情をきくと、集会室の改装工事については当時の総会・理事会での承認手続はなされているが、その一方で、本来なされるべきマンション本体の長期修繕工事がなされていないことでその後の理事会が苦労したことや、住民からの疑問についてフタをして情報を隠してしまうような対応は理事会としてすべきではないと考え、当時の資料を苦労して整理して掲示したことがわかった。 

 裁判では、このような理事会の考えや姿勢を裁判官に理解してもらうよう努めたところ、同じ分譲マンションの住民間の問題であることから判決ではなく和解で解決すべきという強い勧告が裁判官からあった。その勧告理由の中で、掲示した理事会の行為は公益目的のものであり、掲示内容の多くが真実であることを認めてもらったうえで、一部言い過ぎた点について訂正するということで、和解が成立した。 

 「マンションは管理を買え」と言われるように、マンションの適正な管理はとてもだいじである。それを担う理事会は、多額の管理費や積立金を住民のために適正に支出する責任がある。マンション住民のさまざまな意見をくみ取りながら管理を担う理事会の大変さと重要性を、この事件を担当するなかで、あらためて感じた次第である。