コラム

石綿被害者の訴えを裁判所に届ける

2021.08.12

 私が担当している大阪建設アスベ スト訴訟2陣原告のAさんは、配管工の職人です。Aさんは、配管工の仕事を天職と考え、様々な資格を取得するなど向上心をもって一生懸命働いてきました。 

 ところが、55歳の年に職場の健康診断で肺がんが発覚。肺がんの原因は、日々の作業の中で、配管周りに取り付ける石綿(アスベスト)含有の断熱材(保温材)等を切断・加工したときに発生する石綿粉じんを吸い込んでいたことでした。Aさんは、すぐさま肺の一部の摘出手術を行い、放射線治療など大変な闘病生活に入りました。当然仕事を続けることはできず、55歳の若さで職を失いました。 

 Aさんは「天職と考えていた配管工の仕事で病気になったことがとても悔しい」「収入がなくなり家族に申し訳ない」と言います。家族のために、そして自分と同じ肺がん患者にこの裁判のことを知ってほしいと考え、裁判に立ち上がりました。 

 私たちは、Aさんを勝訴させるべ く、作業実態を聞き取り、使用した建材の調査・分析など、主張立証を尽くしました。同時に、Aさんの被害や裁判にかける想いも公開の法廷 で訴えてもらいました。 

 被害者はみな過酷な闘病生活を送 り、発症から数か月で亡くなる方もいます。打ち合わせを重ねるたびに弱まっていく被害者から話を聞くのはつらいです。それでも、家族のため、未来の被害者のために立ち上がった原告らの訴えを裁判所に届けるべく、これからも頑張りたいと思います。