コラム

日本学術会議会員の任命拒否問題について

2021.03.30

菅首相が、日本学術会議が推薦した 会員105名のうち6名の任命を拒否した問題は、多くの学会、大学、研究 機関はもちろん、日弁連や各地の弁護士会など法律家団体も相次いで抗議を表明しています。

日本学術会議は、我が国の科学者の内外に対する代表機関で、戦前や戦中に、科学者が軍事目的に奉仕したことへの反省から設置されました。そのため、政府の諮問機関とされながら、職務の独立性が特に保障されているのです。 会員の選出方法は、当初は公募制で、政府の関与は認められておらず、公募制から推薦制に変わってからも、総理大臣の任命は形式的なものと、国会でくり返し答弁されてきたように、これまで日本学術会議の推薦名簿から任命を拒否されたことはありませんでした。

菅首相は、この任命拒否の理由をまったく説明できていません。この6名は、安保関連法や共謀罪の制定過程で、批判的な見解を述べていた方ばかりです。とりわけ、私の恩師である松宮孝明教授は、刑法学の高名な研究者ですが、国会の参考人質疑で意見を述べ、書籍を出すなど専門家の立場から共謀罪の問題点を指摘していました。

政府の施策を批判した学者を狙い撃ちにしたというのが真相です。任命拒否は、人事を通じた日本学術会議への無言の圧力であり、学術会議の職務の 独立性を侵害するもので許されません。このままでは当初の設置目的をも失うことになりかねず、6名の任命拒否の撤回と任命を必ず実現しなければなりません。