コラム

退職した従業員は元の勤務先と同じ商売は出来ない?

2021.03.20

AさんはB社を退職し、しばらくして、B社と同種の商売を始めました。 ところが、B社は、Aさんに、「同じ商売をすることは、場所がどこだろうと、未来永劫認めない」といって、営業を止めること(差し止め)と損害賠償を請求してきました。Aさんは応じなければならないでしょうか。

B社には、「従業員は退職後も、同種の営業をしてはならない」という就業規則がありました。会社との間に、 就業規則や誓約書など、退職後の競業 を禁止する合意がある場合、従業員は 基本的に従わねばなりません。しかし、従業員が退職後に開業する際、慣れた仕事をしようと考えるのは当然で、職業選択の自由(憲法9条)が保障され ています。このため、制限の内容が厳しすぎる場合(営業を禁止する期間や地理的範囲に制限がない場合、代償措置がない場合など)には、合意は無効となります。

私がAさんから依頼を受けてB社と交渉したところ、Aさんが解決金を支払う代わりに、営業を続けられるという 内容で解決が出来ました。

なお、会社と従業員の間に競業を禁止する合意がない場合、従業員が退職後に元勤務先と同じ商売をするのは原則自由です。在職中に開業準備をしていた場合や、不当なやり方で顧客を奪う行為(信用を貶める方法で勧誘を行うなど)が無い限りは、会社は営業の差 し止め・損害賠償を求めることは出来ません。