2024年4月1日から、相続登記申請が義務化となりました。その内容は、相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を法務局へ申請しなければならないというものです …続きを読む
Aさんは、海産物の内臓を海に捨てて、海上保安庁に逮捕され、その後勾留されました。勾留とは、逮捕に引き続いて、被疑者を身体拘束する手続きで、原則10日間、さらに延長される場合もあります。勾留は、被疑者の行為に対する法的責任である刑罰とは別物で、証拠を隠滅すると疑う相当な理由や、逃亡し、逃亡すると疑う相当な理由があることが、勾留の要件となります。本来これらの要件は具体的に判断されるべきなのですが、抽象的に判断されて容易に勾留が認められる傾向にあるといわれています。
身体拘束が続くと、それまでの日常生活をおくることが当然できなくなります。仕事に行けませんので、職を失うことも十分にありえます。
Aさんは、父母、妻、子どもの大家族の家計の中心を担っていました。Aさんには本業がありました。このコロナ禍で本業での収入が大幅に減ったために、海産物工場にアルバイトとして勤務することになったのです。Aさんは、工場の担当者から指示をうけて海産物の内臓を海に捨てており、あくまで工場の仕事の一環と認識し、違法という認識は希薄でした。アルバイトをきっかけに本業を失うことはまさに本末転倒という状況でした。そこで勾留の取消を求める準抗告という手続きをとることにしました。
私は、その日のうちにAさんと面会をし、事情を詳しく聞き取りました。その翌日、証拠隠滅の疑いや逃亡する疑いが客観的にも主観的にもないことや、勾留が長引けば、職を失う危険が現実に迫っていることなどの主張を準抗告申立書にまとめ、裁判所へ提出しました。その翌日、裁判所は勾留裁判を取消し、勾留請求を却下しました。Aさんの身体拘束は解かれ、Aさんは家族のもとに無事に帰ることができ、本業にも復帰することができました。
刑事弁護は、初動が肝心であることを改めて実感しました。