コラム

アメリカでのレイシズム抗議行動に対する日本の報道姿勢について

2020.08.25

新型コロナの影響で外出を控え,テレビのニュース等を見る機会が増えたのではないでしょうか。当時よく報道された海外に関するニュースが、アメリカのミネアポリスで起こった警察官の不適切な拘束方法によって黒人男性が殺された事件と、その警察官が当初逮捕もされることがなかったことなどへの抗議行動の広がりでした。

しかし日本の報道では、抗議行動に乗じた街頭での窃盗事件の頻発や、アメリカにいる日本人が怖くて外出できないといったものが多く、抗議行動が何故起こったのか、また抗議行動に自分たちの責任の問題と考える多くの白人が参加していることが正面から取り上げられたものは多くなかったように思います。

そして、NHKの子供向けの海外ニュース番組である「世界はいま」の中で、アニメーションを用いて、白人との貧富の格差が大きいアメリカで、新型コロナが流行して多くの黒人たちが失業し、そんな怒りがあちこちで噴き出したのが「暴動」の原因だという説明がなされて、大変な批判を浴びました。

最近はアメリカの抗議行動への参加者に直接取材をし、その中での人種融和の取り組みなどを紹介する新聞記事などもみられるようにはなりましたが、決して多くなく、人種差別の問題は、他の国の出来事といった姿勢の報道も多いのです。また、日本の中で今もある人種差別について、黒人の血を引くアスリートがSNSで発言すると、心ないコメントが集中するといったことも続いています。

他方、アメリカのCNNでは、セサミストリートのキャラクターを使って子供たち向けにニュース番組を作り、レイシズムについて「見た目や肌の色の違いを理由に不公平な扱いを受けてしまうこと」と説明し、抗議行動の意味を「レイシズムを終わらせるために抗議活動をすることで、気持ちを分かち合ったり、物事をよくするために一緒に声をあげること」と紹介していました。

これまでも黒人に対する警察官の暴行死事件は何度も発生し、その度に抗議の行動が行われてきました。今後、このような差別を少しでもなくしていくために、アメリカでどのような取り組みがなされていくかに注目する必要があります。そして、私たちにとっては、この日本での差別をなくしていくためには何が必要であるかを一人一人が考えていくことでしょう。