コラム

「雇用によらない働き方」に注意

2019.05.03

マッサージ店で働いていたXさんは、些細なことで、店長に「明日から来なくていい」と言われました。クビの撤回を求めると、店側は、Xさんが「業務委託」の契約書を作成していたことを理由に拒否。

労働契約を結んだ労働者なら、契約解除は解雇にあたり、正当な事由がない限り無効となりますが、業務委託契約を結んだ個人事業者だと、労働法による制限がかかりません。

労働者かどうかは、契約の名目ではなく、店の指揮監督下にあったか、報酬が労務の対価にあたるかなど、実質により判断されます。

Xさんは、店が指示する日・時間に、指示された服装で勤務しなければなりません。深夜や休日を含め長時間労働で、時間的・場所的に拘束されていました。月々のお金は、「基本給」のほか、深夜や休日の出勤に応じた手当が加算され、労務の対価として支払われていました。実態は労働者です。裁判所に申立てをし、労働者として不当解雇されたことを前提に解決しました。

シェアリングエコノミーやフリーランスが話題となり、政府も「雇用によらない働き方」を政策において積極的に位置づけています。しかし、実際は、Xさんの例のように、企業が使用者としての責任を免れようと、「雇用・労働ではない」と主張することも多いのです。「雇用によらない働き方」をもてはやす風潮が、労働者保護の規制を無にすることにつながらないよう注視が必要です。