コラム

提訴10年のB型肝炎訴訟

2018.12.03

2008年にB型肝炎の全国訴訟が提訴されてから10年。

昭和生まれの人の肩には当然のように残っている注射の跡は、予防接種(種痘やBCG)の痕(あと)である。感染症予防のための予防接種がB型肝炎ウイルスの感染を広げ、全国で45万人以上の人が感染した。提訴した被害者は5万人を超えたが、まだ被害者全体の1割余り。

先日、肝臓がんで治療を続けているが、母親が10年以上前に死亡してカルテや検査結果が残っていない、他の法律事務所では提訴できないと言われたという相談をうけた。日赤の献血記録、介護施設入所時の検査記録、生命保険加入時の検査記録、「カルテが残っていない」という医療機関の倉庫に実は古いカルテが残っている実例の紹介、母を長年みてくれていた医師の証言などをお話しして別れた。このような相談を受けるのは本当につらいが、決して少なくない。

私たちのB型肝炎の裁判は提訴ができない人も含めた肝炎患者全体の治療費助成の拡充などの実現も重要な活動としている。またB型肝炎は血液感染であり日常生活では感染しないのに、近所の人たちと温泉旅行に行った後で非難された患者さんからの相談もある。肝炎患者が病気のことを普通に話せる社会と、そのために患者が自らの体験を医学生・看護学生などに話す患者講義の活動も始まっている。除斥という広い意味での時効を理由とした権利制限を認めない裁判もようやく本格化した。

10年前には考えてもいなかった活動が広がり始めている。