コラム

法律相談Q&A:借家の追い出し被害

2018.08.28

Q:ある日、住んでいるアパートに帰ったら、部屋の玄関の鍵が開きません。私が家賃を3カ月分滞納したままなので、大家さんが契約している家賃保証会社が鍵を交換してしまったそうです。こんなことって許されるのでしょうか?

A:家賃を滞納したからといって、部屋の鍵を勝手に変えることは、決して許されません。これは違法な追い出し行為です。なぜなら、実力行使で権利を回復するという「自力救済」は原則として認められていないからです。つまり、大家さんが強制執行などの法的手続きをしない限り、あなたは自分の意思に反して住まいを奪われることはありません。

このため、大家さんや家賃保証会社に対して、直ちに違法状態を解消し、部屋に入れるようにすることを要求できます。更に、慰謝料などの損害賠償を求めることができる場合もあります。

もし、契約書に「家賃を滞納した場合は、鍵の交換など施錠されても異議は述べない」との条項があっても同じですので、安心してください。個人で事業用として借りる場合でなければ不動産の借り主も消費者ですので、消費者契約法で保護されます。先ほどの条項は、同法10条で無効とされる「消費者の利益を一方的に害するもの」に該当すると考えられますので、鍵交換を正当化する根拠はありません。

長引く不況を背景に家賃を滞納する人が増えたこともあり、家賃保証会社の中に「追い出し屋」と呼ばれる悪質な業者が入り込み、2008年頃から社会問題となっています。政府は2010年、こうした業者を規制するため、強引な家賃の取り立て行為に刑事罰を科すことなどを盛り込んだ法案を国会に提出しましたが、同年4月に参議院では全会一致で可決したものの、衆議院では継続審議となり、残念ながら廃案となってしまいました。その後、法案は再提出されず今日に至っており、法律の整備が待たれるところです。

追い出し行為の被害に遭った場合は、当事務所にご相談ください。