コラム

法律相談Q&A:遺言ってどんな内容でもいいの?

2018.07.02

Q 私の父と母は正式な離婚はしていませんが実は仲が悪く、長い間家庭内別居をしていました。先日、その父が先日他界したのですが、「全ての財産を知人のAさんに譲る」という遺言を残していたことがわかりました。私と母は、父の遺産を分けてもらえないのでしょうか?

A 被相続人(父)の子と配偶者であるあなたとお母さんは遺留分権利者ですので、遺留分減殺請求を行うことにより、遺留分の限度で相続財産を取り戻すことができます。

遺留分とは、残された遺族の生活を保障するために兄弟姉妹及びその子以外の法定相続人に認められた、被相続人の意思によっても奪えない相続分のことです。

具体的に保障される遺留分の割合は、父母等直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1となります(民法1028条)。今回の質問のケースでは、お母さんと娘さんが法定相続人ですので、遺産の2分の1がおふたりの遺留分の範囲となります。

遺留分を取り戻すために、法定相続人は遺留分減殺請求(民法1031条)をすることができます。遺留分減殺請求は、遺留分権利者が、自分のために相続が開始したことと遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った日から1年以内に行わなければ時効によって消滅してしまいます。遺留分侵害のおそれがある遺言を発見した場合は、絶対に放置せず、急いで弁護士に相談してください。

では、お父さんの立場になって、お世話になったAさんに遺産を譲るにはどうすべきでしょうか?

遺留分侵害が生じないよう、「遺産の2分の1をAさんに譲り、残りを妻と娘に譲る」といった内容を思い浮かべるかもしれません。このような内容の遺言を「相続分の指定」といいますが、これだけでは、個々の財産を誰が相続するか定まっておらず、別途遺産分割協議や調停・審判手続をとならければなりません。親族間の協議でも紛糾する場合があるのに、第三者が入ると余計ややこしくなり、かえって面倒をかけることになるかもしれません。遺言では、後のトラブルを避けるために、何をどうしたいのかを具体的に記載することも重要です。

遺言の内容や書き方についてご相談がある場合は、お気軽に当法律事務所までご連絡下さい。