コラム

「特別縁故者」制度というのがあります

2018.04.09

長年弁護士をしていても、「司法試験の時に勉強したものの、実際の案件ではほとんど出逢わない制度(条項)」というものが、(当たり前といえば当たり前ですが、)いくつもあります。
そのうちの一つに、相続での特別縁故者というものがあります。この制度は、相続人がいない場合の相続財産に関係する制度です。

私の依頼者は、結婚したての頃、親戚のAさんから、「年老いた父母を抱えて働いているので一緒に住んで、私たち家族の面倒をみてほしい」と頼まれ、同居を始めました。 爾来40数年、Aさんの父母、そしてAさんの最期のお世話まで、ひとつ屋根の下で、ほとんど実の娘のように、面倒をみてきました。
Aさんには、相続人はなく、持ち家と預貯金が残されました。40数年も家族同然でしたが、遺言もありませんでした。

特別縁故者制度は、こうした場合の制度です。まずは、Aさんの相続財産管理人を家庭裁判所が選任し、相続財産(相続人がいないかなど)を調査して整理し、残った財産について、「生計を同じくしていた者」、「療養看護をした者」など、特別に縁のあったものに、その全部または一部について「相続」を認めるものです。

この方も、40年間のAさんと自分たち家族の実際の生活やAさんの父母とAさん本人の老後のお世話などについて、詳細にまとめ、家庭裁判所に資料を提出するなどして報告して、特別縁故者として認められました。