コラム

軽井沢バス事故の教訓

2017.10.16

2016年1月15日に発生した軽井沢バス事故では、スキーツアーに参加した大学生の乗客13名が犠牲になりました。私は現在、東京・長野の弁護士たちと、この事故によるご遺族の支援を行っています。

ツアーを企画した旅行会社は、貸し切りバスの手配などをランドオペレーターと呼ばれる業者に依頼し、手配されたバス会社は国が定める最低基準(約27万円)を大きく下回る金額(約19万円)で引き受けていました。
そのようなカラクリによって、学生を対象とする格安ツアーが行われていたのです。

この事故を受けて、国土交通省は緊急調査を実施したところ、実に3割の貸し切りバス会社が下限割れ料金で契約をしていることが明らかになりました。
そして、ランドオペレーターが介在したケースに下限割れが多く発生していることが分かったのです。
そのため、この事故を契機に旅行業法が改正され、規制対象とされていなかったランドオペレーターを登録制とし、管理者には研修の終了を要件とすることとされました。そのような制度改正は、この事故の遺族たちが二度と同じような事故を起こさないようにと国土交通省と交渉を行うことを通じて実現したものです。
また、国土交通省では、ドライブレコーダーの設置やその記録を利用した指導・監督の義務づけを行うとともに、バス会社の安全性に関する情報をホームページで公開することを定め、これらは既に実施されています。
公開された安全情報では、先進安全技術搭載車の導入状況や、バス協会が実施しているセーフティバス認定の取得状況、運転者の平均給与の水準等が掲載されています。

しかし、このような改正の結果も、そのことが国民に充分周知されなれけば、その意味がありません。
旅行を申し込む際には、料金の安さを比較することはやむを得ないことですが、その安さが安全を損なった結果ではないかどうかについて、安全情報を活用することやそのツアーに関わる業者等の仕組みを調べることなど、安全のことを忘れずに判断することが必要です。
この事故を通じて、そのような認識が少しでも広がればと考えています。