コラム

相続財産の全容がわからない・・相続の「限定承認」について

2012.07.25

心配ごと

Aさんの妻Bさんが亡くなり、Aさんと2人の息子さんが相続をしました。亡くなったBさんには不動産などの財産がありましたが、一方で、亡くなった後、Bさんが借金をしていることも分かりました。複数の知人から「Bさんにお金を貸していたので返して欲しい。」という請求があったことから判明。

「請求のあった借金が全部であれば、それを返すだけの相続財産はあるけれど、もしこれ以上に財産を上回る負債が出てくれば、全部は返済できない」というのが、ご遺族の心配でした。

借金の方が相続財産を明らかに上回るのであれば、家庭裁判所に相続放棄の手続をし、相続人自体をやめてしまう方法があります。「相続放棄」と言います。相続の開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申し出をします。

限定承認とは

財産と負債、どちらが上回るのかが不明の場合には、相続の「限定承認」(民法922条)という手続を取ることが得策です。限定承認とは、「相続財産の限度でのみ負債を返済する」という手続です。

限定承認は、相続の開始が分かったときから3か月以内であれば、家庭裁判所に申し出ることができます。ところで、限定承認は、相続人全員で行う手続ですので、Aさんと息子さん2人が限定承認を申し出ました。

限定承認が決まると、相続財産管理人を選任し、相続財産管理人が、財産と負債について、全部でどのくらいあるのかを調査します。それが確定すると、負債の返済をし、残れば相続人に分配するということになります。

Aさんの場合、限定承認手続きの中で、不動産を換価し、裁判で貸金債権を回収して相続財産の全てを現金化しました。また、負債についても全体が明らかになりました。結果、負債より財産の方が多く、相続人のAさんと息子さんたちは、相続財産を受け取ることができました。だいたい1年ほどで限定承認の手続きは終了しました。