コラム

離婚に伴う財産の保全

2011.12.16

(慰謝料請求と財産分与)
離婚を決意したとき、解決の必要な経済的な問題は、慰謝料と財産分与です。
 
離婚慰謝料は、夫婦の関係を破綻させられた人が、破綻させた人(有責配偶者)に対して求めることのできる損害賠償の権利です。

一方、離婚に伴う財産分与は、夫婦が離婚するに際し、夫婦で作り上げた共有の財産について、精算分を請求できる権利です。

(財産の保全)
ところが、離婚を決意したときに、相手に財産はあるものの、離婚の手続をしている間に相手が使ってしまって(あるいは隠してしまって)財産が無くなってしまい、いざ決まったときには、相手にはどんな財産も残っていない、ということになってしまわないか、ということが、大きな心配事です。 
 
そこで、離婚を決断したときに、手続に入る前あるいはその途中で、相手方名義の財産の処分をさせないよう、禁止してもらう手続があります。保全処分といいます。
 
相手方名義の財産は、不動産、預貯金、退職金と様々ありえますが、その財産の種類によって、保全処分の手続は異なります。

(退職金の差押え)
離婚を決意していた58歳のNさんは、離婚調停の中で、間もなく定年を迎える夫の退職金の一部について、財産分与を主張していました。しかし、夫は「これは自分が働いた対価であり、財産分与として渡すものではない」と、頑として譲る気配がありませんでした。調停は不成立。家庭裁判所で離婚を決めてもらうしかありません(裁判離婚)。

しかしながら、裁判をしている間に、退職日が来て退職金の支払が終わってしまうと、夫がどこに使ってしまうかも分かりません。 そこで、この退職金の一部は財産分与の対象であるとして、雇用主に対して、支払をしないようにという「仮差押え」(保全処分)の決定を裁判所から出してもらいました。
 
そして、離婚裁判を提訴。離婚裁判の手続きの中で、夫と話し合い(和解)が成立し、退職金の一部を財産分与として得、また、年金分割も得て、Nさんの老後の不安は、少し緩和をして離婚をすることができました。

(不動産の差押え)
Bさんは、老年という時期になって、夫の不貞が発覚。夫は、商売もほっぽり出して遊んでばかり。夫婦共有名義の不動産に抵当権をつけて借金をしようと考えている様子でした。Bさんは離婚を決意し、不貞による慰謝料請求の権利を守るべく、共有不動産の相手方持ち分について、「仮差押え」(保全処分)をしました。

その後、離婚調停を経て、話し合いにより、Bさんの希望通りの解決をすることができました。