孔市良通信

ピレネー讃歌 vol.5「ピレネーの村々と山々の旅(その5)」

2017.06.19

1.サン・マルタン・ドゥ・カニグー修道院へ
ヴィルフランシュ・ド・コンフランの町から10キロ先にカステイユの町があり、この町から徒歩1時間位、山道を登るとサン・マルタン・ドゥ・カニグー修道院がある。この修道院の見学が今日のメインである。

ここから、1時間登るのは少々しんどいなと思っていたところ、ジープがある事が分かった。運賃を聞いてもらうと、往復15ユーロで修道院まで行ってくれるという。僕と岡本先生らで、ジープで一足先に修道院を目指した。他の人達は、約1時間の山道のハイキングで修道院まで登ってくる。ジープに乗っていても、なかなかの急坂の道で歩くのはしんどそうだ。

修道院に到着して、ここから少し小高い展望台まで歩いて修道院の全景写真を撮影する。写真を見ても断崖絶壁の上に建っているのがわかり、すごいなぁと思う。この修道院は、入場が予約制になっていて修道僧の案内で内部を見ることになっている。午後4時の予約なので、徒歩組の到着を待つことにする。雨がポツポツ降ってきた。

2.サン・マルタン・ドゥ・カニグーの残念な思い出
今から丁度10年前、月日もほぼ同じ2005年7月19日、標高600メートルのヴェルネ・レ・バン村から登山ジープに乗ってカニグー山(2784メートル)の登山に出かけた事があった。ジープは山小屋(2150メートル)まで行ってくれるが、このジープの荒っぽい運転でみんなフラフラになった。

山小屋から2時間40分かけて山頂に到着した。晴天の日は、地中海が見えると聞いてきたが、この日はくもり空で展望はよくなかった。カニグー山は、奇妙な名前の山で「犬の歯」という意味らしい。

この日、下山途中にサン・マルタン・ドゥ・カニグー修道院に寄る予定であった。しかし山でゆっくりした上に下山のスピードものろのろで、修道院が閉まる時間が過ぎてしまい寄ることが不可能という事になってしまった。何としても、再度訪れたいと願って来たが、結局10年の年月が過ぎてようやく、今回の訪問になってしまった。この登山については、私の弁護士の散歩道4「山と花」に詳しく書いているので、興味のある人は、読んでほしいと思う。

 

3.サン・マルタン・ドゥ・カニグー修道院について
今回は再度のサン・マルタン・ドゥ・カニグーである。この修道院は1092メートルの地点にあり、写真でもわかるように絶壁の上に建てられている。

建築の時期は、1005年でセルダーニュ・コンフラン泊のオリバーカフレタによって設立されたと言われている。写真でも分かるように、ゴツゴツした岩の崖を背景にしてカタルーニア風の塔が見える。右側には、修道院付属教会の後陣が四つの祭室が見える。ピレネー山中のロマネスク教会としては最も有名なものの一つである。

ただ、この修道院も1786年以後収奪と自然破壊も加わって見えるかげもなくなってしまった。1902年になってようやく、ピレネー山脈のフランス側・スペイン側から2000人もの人達が集まって復元を志し、1952年ようやくほぼ復元が完成したといわれている。(ヨーロッパの古寺巡礼」饗庭孝男 新潮社)

教会内には三重の身廊があり、さながら木造小屋の雰囲気を持っていると書かれている。回廊の柱頭彫刻は羊や獅子や人間のユーモラスな顔もあり、ほとんど世俗的なもので、親しみのわくものが多い。

午後4時になったので、入口に集まって修道僧の説明を聞き、その後教会の内部をゆっくりと見学して歩いた。山岳信仰にふさわしい、素朴な雰囲気が自然と伝わってきてロマネスク教会の良さを十分に味わうことができた。

帰りは、私も徒歩で山を降りた。17時20分下山をはじめ18時バスに乗ってすぐモリ・レ・バンのホテルにむけて出発した。