孔市良通信

民謡ふるさと紀行 vol.7「秋田県仙北地方 ひでこ節」

2014.09.02

1.はじめに
2014年8月8日、角館に泊まって翌日、田沢湖から秋田駒ヶ岳(1637m)に登ることになった。

メンバーは早川弁護士、谷弁護士、谷真介弁護士、津留崎弁護士と、九州の労山の人達4名らと私の10人であった。

8月9日は台風の影響で朝から小雨であったが、ホテルを7時過ぎに出発して田沢湖駅に出て、バスで8合目まで行き、そこから頂上を目指した。秋田駒や田沢湖(日本で一番深い湖)など、この辺は昔から秋田県の仙北地方と言われている。
 
ひでこ節はこの仙北地方の民謡で、江戸時代からこの地方で歌われてきた。
 
ひでこ節というと、高峰秀子ではないが女性の名前のつく民謡かと思ってしまうが、人の名前ではなく、ユリ科の多年草の山菜の名前なのである。

2.なぜ山菜の「ひでこ」が民謡として歌われてきたのか。
田沢湖周辺の山村では、農地も少なく気候条件も悪かったため米の収穫が少なく、年貢米を納めることができなかった。このような事情のもとで、慶長9年(1604年)に税制が改正され、年貢米の変わりにこの山菜を納入しても良いことになったらしい。
 
この山菜取りの歌がひでこ節として歌いつがれてきたと言われている。
 
それでは年貢米に変わって納められた「ひでこ」はどんな山菜なのか、我々が知っている名前はユリ科の「シオデ」である。「シオデ」に「コ」がついて「シオデコ」になり「ヒデコ」となったと言うことである。
 
写真を見るとアスパラに似ている。ひでこ節の歌詞を一番だけ紹介しておこう。短い歌である。  

十七、八ナァ 今朝のナァ
若草 どこで 刈ったナァ このひでこナァ
アラ ヒデコナァ

3.藤沢周平の「ひでこ節」
2009年に初出版された文春文庫の中に藤沢周平の未刊行初期短篇「無用の隠密」があり、15篇が紹介されている。その中に「ひでこ節」と題する短篇がある。これはあまり知られていない。
 
この小説の舞台は秋田の仙北地方ではなく、山形県西部、現在は鶴岡市の南西部にある温海(あつみ)温泉が舞台である。旅芸人一行が、人形師長次郎が出入りしている温泉宿「越前屋」に宿泊し、宿賃が払えずにそのかたに置いていった座頭の娘お才と長次郎の恋愛物である。
 
このお才が美しい声でひでこ節を歌うのがストーリーの背景として生きているのがしんみりしていてなかなかよい。
 
私も民謡を習いだして2ヶ月目に、このひでこ節を習ったので、大変印象深く心に残っている曲であり、藤沢周平の小説の題名にも使われていることを知り、少し嬉しかった。